− 10月8日 月曜日(祝日)−
予定では今日が搬送日。現地での試走を行うはずであったが、レース開催前ということで現地の使用ができないことがわかり、搬送そのものも流れてしまった。
昨日の作業が深夜まで及び、誰一人として起きてこない。
9時ごろ、のそのそと誰ともなく起き出し、もくもくと作業が開始される。
「夕方、帰るから。家かえって台所のアルミ貼りする約束がある」
S田は前日から宣言していた。もちろん松FもS田が早く帰宅できるように協力したつもりであったが、時間は無情に過ぎていく。S田の焦りが目に見えてくる。
タイムリミット予定の3時。 突然S田の手が止まった。
「後やっといてくれる?」
「あ? 何甘えたこと言ってんねん」
「だって、帰ってアルミ貼りしないと・・・」
「私がこれ、出来ると思う?」
作業は佳境。シュラウドをタンクに合わせるための立体成形である。設計図はすべてS田の頭の中だ。
「でも・・・帰らないとなぁ」
「帰ったらあかんって言ってないやん。 私に残りができるか? できないっていってるだけやん」
口ごもり、右を向いたり、左を向いたり、判断に迷っているS田をにたにた笑いながら松Fが追い込む。
「やるんやったら、さっさとやった方が早く終わるで。迷ってる時間に少しでも作業進むやん」
作業の続きと時計を見比べるS田。
「見ててもできてこないで。 私はできない。 設計図もない。 できるのはあなただけ〜」
さて放って逃げるか?と松Fが次の行動を楽しみにしていると、急にS田の様子が変わった。
「電話してくる」
どうやら腹を括ったらしい。
シュラウド完成後、帰宅予定を大幅に遅れてS田は帰宅した。
帰宅後のアルミ貼りも完遂したとの連絡が深夜入った。
− 10月11日 木曜日−![](images1/tadaima1.jpg)
家でボディアーマーを作る松Fの携帯にメールが入った。
“明日、昼からかフレックスで夕方休もうと思うんだが、いる?”
一応完成しているシュラウドと、テールの出来が気に入らないためにやり直したいとの申し出であった。
・・・・・・・・・S田さん、 電王のために仕事休むんか。 すごいな。
その熱意に応えたいが、残念ながら用事がある。
夕方からなら対応できるよう努力しよう。
“了解。早めに帰っておいてね〜”
レースは一週間後。
作業できるのは今週末のみ・・・。
− 10月12日 金曜日−
松Fの用事がずれ込んだ。
さらに渋滞が帰宅時間を遅れさせた。
いつもは渋滞時間をずらして行動していたため、渋滞の時間を計算し忘れたことが原因だ。
だがその失態は松Fだけではなかった。
帰宅してもなかなか連絡がないS田。
まさか、また事故でもあったのではないか、と心配する松Fに渋滞で遅れるとの連絡が入った。![](DB2.files/image001.gif)
S田もまた、夕方の営業帰社渋滞を計算に入れていなかったのだ。
予定より2時間も遅れて作業開始。
まずは
「休憩させて」
「遅れてるのにか?」
「だから、ほら、初期打ち合わせ、15分ってタイムスケジュールに書いてあるだろ?」
S田は作業のタイムスケジュールを作って、事前に松Fにメールしてきていた。
松Fは自分が下請け業者になったような気分がしていた。
タイムスケジュールでは22:55に作業終了。 総時間5:25で作業完遂。
「早く終わったら帰るから!」
高らかに宣言したS田であったが松Fは知っていた。
業者の作業予定時間は延びることがほとんどであることを・・・。
N田が前々から頼んでいたワイヤリングをS田はさっさと終了させ、デンバードの作業が開始される。
バックには電王の曲が流れる。![](images1/tadaima2.jpg)
電王の曲には台詞インサートのものもある。
台詞は無意識のうちに脳にインプットされ、沸いた頭のS田、松Fは台詞の言い回しで話が進むまでになっていた。
「ここ、切ってもいいよね?答えは聞いてない!」
「僕が器用なのは生まれつき」
「松F、そのやり方はよくない。卑怯すぎる」
「じゃ、お前やれ!」
知らない人が聞いたら意味不明である。
仕事から帰ってきたN田は、ハイテンションのS田・松Fを、ローテンションの目で一瞥し、一人駐輪場でバイク整備を始めた。
バイク整備も佳境に入っているとき、S田・松Fがフィッティングに現れた。
N田の作業を無視してS田はシュラウド、カウルのフィッティングを行う。 さすがに温厚なN田もいい加減嫌そうな表情をしていた。
すかさず松Fは
「S田は本当はこんなヤツじゃないんだ。すまない。あやまる」
と棒読みで言った。
松Fの脳に電王BGMでインプットされた台詞の真似だ。
一瞬、白い空気が流れ、N田が きぃぃぃぃぃ! と絶叫する。
「僕が!僕が!こんなにがんばってるのにぃ!!!!」
げらげら笑い、松FとS田は去っていく。
「僕が!こんなにがんばってるのにぃぃぃ!!!!」
N田はまた一人残された。 ![](images1/double%20action.jpg)
![](DB2.files/image002.gif)
気が付けば02:30。
とうとう松Fが壊れた。
「寝よーや」
N田は駐輪場での作業を終え、家の中で本番に向けての出撃準備に余念がない。
S田は日曜日は14時までに帰宅しなければならない!と作業の手を止めない。 今日も泊まりになってしまい、家庭的にマズいらしい。
「そんなん、眠い中やってても絶対うまくいかんわ! 怪我するもと! 寝るの! 寝るの! 寝させろ、ゴラァ!!!」
松Fは叫びながら布団にもぐりこんでいく。
しぶしぶN田、S田も就寝についた。
− 10月13日 土曜日−
朝からN田は仕事に出かけた。
見送った松Fは二度寝。
S田はN田よりも遅く起きて作業に入った。
買出しに出かけたS田が戻ってくるころ、松Fは二度寝から起きだした。
時間との戦いであった。
S田は時計を見ながらシュラウドの補強を入れていく。
すべてが完成すると次は取り付けだ。
バイクにもともと付いているライトカウルやフェンダーに取り付け用の穴をドリルであける。
最初は小さな穴から、大きな穴へと懇親丁寧に行っていたが、ある時点でS田は気付いた。
「このままだったら時間までに帰れないじゃないか!」
寝ぼけ眼の松Fに細いドリルを渡し、S田は太いドリルで一気に穴をあける戦法に切り替える。
デンバードのカウル、シュラウド、テール、ハンドガード。 すべてをインシュロックで仮止めした姿は圧巻であった。
このとき、S田・松Fは24耐でそれなりの笑いはとれる事を確信した。
↑ これ (YAMAHA TT-R250R)が
↑ マシンデンバード(笑)になる
デンバードの雄姿をうっとりと見つめるS田は、ハッと時間に気付いた。12時は目前である。
S田は後片付けもせず、荷物を纏めると一目散に帰って行った。
入れ替わるようにT原がN田宅へ到着。
午後、穴だらけにされたバイク本体は岐阜のK森別宅へ搬送された。
− 10月15日 月曜日以降・・・−
バイクが岐阜に搬送され、最重要課題が目の前から消えたN田は爽やかに仕事に出かけていった。
残された松Fは、いまだダンプラと格闘していた。
残された課題はボディアーマー、そしてライダーのお面である。
週末のデンバードの作業以外、松Fはボディアーマーを作り続けていた。
ダンプラで作ったボディアーマーはブレストガードに取り付けて仮装、というのが当初からの予定であった。
時には仕事から帰り、疲れきったパンツ姿のN田に、仮止めしたボディアーマーをつけてフィッティングの感触を確認したりもした。
怪我をしないように、ライディングの邪魔にならないように。 松Fは細心の注意を払いながら作業していた。
そのため作業は思うように進まない。
そのうえ、S田からは手伝いもしないくせに
“背面もよろしく” などと無責任なメールがやってきていた。
「まだ終わらない、完成しない!ダンプラなくなった!あうぅぅぅぅぅ」
松Fは追い込まれ、泣きが入ってきていた。
− 10月17日 水曜日 夜−
N田がまじまじとデンライナーのフロントカウルとサイドカウルを見つめていった。
「ナンバーが見えにくい・・・」![](images1/beltplan.gif)
「あんが?」
松Fはボディアーマーにデザインの布ガムテを貼る手を止めた。
「下地に白を入れないと見えないよ」
「わかった」
苛立ちを抑えながら松Fは白いカッティングシートを切り出した。
黒と白のカッティングシートがうまく重ならず、松Fの苛立ちは最高潮に達する。
「んぎゃーー!まだまだまだまだ終わらないのかぁぁ!!」
そこにS田ののんきそうな文面のメールが届く。
“ねえねえ。ライダーベルトどうするの?”
白のカッティングシートを持ちながら半泣きで松Fはメールを返す。
“持ってたんじゃないの?”
“子どもに聞いたら、壊さなかったらいいよって。壊れるよねぇ”
“なに?私が作るの?私が作るのか?作ってもいいよ。どうやるか教えてよ!”
松Fの返信メールに危険なものを感じたのだろうか?
翌日、S田からのメールには、ライダーベルトの作成プランが添付されて いた。
− 10月18日 木曜日 夜−
明日は出発である。
すべては今日終了しなくてはならない。
最後のお面は既にデータがあるので何とかなりそうだが、ベルトをどうしようかと途方に暮れていた松FにS田からのメールが届いた。
文面には
“今日は朝の3時まで頑張りました。ベルトはこっちで作る”
ワードで作ったとは思えない細部までこだわった、こんな小さいのん見えるか?な出来のライダーベルト。(上図)
ケータロス
(下図)というライダーベルトオプションからサイドの部品までご丁寧に作られている。
デンバードの時は 「それっぽく見えればいい」 と言ってたクセに と思いながら、とりあえず持ち上げておこうと賢明な判断をする松Fであった。 実際、ベルトを作って貰えたのは助かったし。
何とかギリギリのタイミングでライダーベルトの完成である。
![](images1/belt.gif)
![](images1/Plat-F.gif)
S田・松Fの渾身の自己満足の結集体!
そのすべては20日、21日に明らかになる!!・・・はず
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