−非日常的な週末が始まる−
10/24 15:00
仕事場にT野から緊急メールが入る。「休日出勤が決まってしまいました・・・」。
急な仕事の都合で参戦できないとの事だった。
皆仕事をもっているからこればかりは仕方ない。
しかし、彼は食料班として購入した食器類を現地に持ち込まねばならなかった。
急遽、調整メールが飛び交う。
奈良在住の彼の荷物を引き上げるとなると関西組が対象となる。
S尾は既に車両いっぱいの荷物を抱えている。
辛うじて積載スペースのあるN田が途中で荷物を引き上げて来ることとなった。
10/25 01:00
岐阜は坂内村 K森別宅。
仮眠中のK森のところへ1人目が到着する。S田だ。
時を空けず、S木、Y城、T邊、S尾、Y本、栗T、N田が到着する。
こんな時間ではあるが、残っているマシン整備、ペダル類のワイヤリングとライトバルブの交換を手早く行い、S木のハイエースにRaidを積み込む。
そして作業終了を見計らったかのようにHS川夫妻が到着した。
翌朝のピットエリア確保の手順の打ち合わせが終了したのは3:00過ぎ。 翌朝は6:00起床予定だ。
まだ遊んでいる者を尻目に、能あるものは床についた。
10/25 06:00
携帯が目覚まし代わりに鳴る。
既に起きて準備している者もいる。
コース入場順はピットの位置を決める。
基本的には受付順だがベストポジションをとるためには早めに並んでおくに越したことは無い。
朝もやの中、準備のできた者からコースへ向かって次々と出発していく。
が、この時点でまだ起きてこない者がいた。
新婚のHS川夫妻だ。
彼らだけは2階で寝ており、誰も起こしに行こうとしない。 いや、行けないのだ・・・。
スタートまでには来るだろう、と放ったままで出発する。
10/25 07:00
コース脇の駐車場には、他チームの宿泊組、早朝到着組等の車両が既に止まっている。
じきに現地合流のT原も到着する。
HSTRは受付番号が早いこともあり、ピットエリアに下ろす車両群は既にピットへの待ち行列に並んでいる。

ピット開放までにはまだ時間があるのでここでしばし仮眠・・・と、この段階で主要メンバーにT原より無線機が配られる。
結構な大所帯のため、誰がどこにいるか分からなくなることが多いからだ。
配られた無線を手に、何人かが早速無線の圏内外チェック目的でコースインする。
簡単に書くとコースを足で歩きながら無線で連絡、どこまで電波が届くか試すのだ。
同時にコース状況も逐一知らされる。
しかし、睡眠時間3時間弱、ここはレースに備えて仮眠を取りたいところ。
だがせっかく配られた無線機、電源を落とすわけにも行かない。
ここで少しコースの説明をしよう。
場所は岐阜県の坂内村、R303から折れて山道に入ったところ。
早くから異常なほど高度にIT化された村内とは打って変わって、コース付近は携帯の電波も届かない文明からの隔離地域。
いわゆるクローズドのモトクロスコースとは異なり、派手なジャンプやフープス、バンクの付いたコーナーなどの見せ場はない。
代わりにガレ場であちこちえぐれている登りストレート、湧き水で滑りやすい下り、川を渡ると大きな石がゴロゴロしたホームストレートの河原、と、別の意味で辛いセクションが待ち受ける。
ちなみにこの河原は走行時間が経過していくと、だんだんとガレたフープス状になってくるのだった。
コースの前半は全て登り、後半は下りという構成。
照明などは一切無く、夜間は月明かりと自分のライト、あとは野生の勘のみが頼りとなる。
一方、レストハウスはしっかりしておりシャワーまで付いている。
売店もある。 メニューの値段も良心的だ。 更に平日の練習は無料。
しかし、川が増水するとコースは水没、レースがお流れになることもある。(←そのまんま)
詳しくはコチラ。
|
10/25 08:00
ゲートオープンの時間・・・ではあるがまだ動かない。
暫くして受付順にトランポがコースインしていく。

ピット・パドックを設営するためだ。
3番手の我々はピットロード最初の良い位置をとることができた。

ここからスタートまでやることは山のようにある。
パドック・ピット設営、マシンの最終仕上げ...etc.
作業分担に基づき、全てが並行作業で行われる。
パドックやピットの設営はS木によって仕切られる。
土建業の彼のハイエースには各種資材と施工道具が積載されている。
ドラえもんのポケットのようだ。
パドックはコンパネを敷いた上にイージーアップテントを連結させ、全体をビニールシートで覆う。
これで雨や夜間の寒さにはある程度耐えることが出来る。


パドックの一角は開口部付きの透明ビニールが貼られ、そこにPCを設置する。
このPCは今回の目玉のひとつ、ラップタイム計測システムだ。
ライダーのラップタイム、平均タイム、チームとしての予想周回数他、各種データを記録できる。
メカニックのY城がVC(プログラム言語ね)でアプリとして作成したものだ。
なんと説明書付きである。(笑)

残念ながら自動計測機器を購入する予算は無かったため、周回毎に誰かがマウスをワンクリックする必要はあるが、それを差し引いても素人技ではない。
同時にケーブルで接続されたもう一台のPCには、各ライダーのタイムがグラフ表示される。
コチラはT邊が作成。
ライダーには厳しいシステムではあるが、ラップタイム遅れによるアクシデントの早期発見や各ライダーの特性を見る上で非常に役立つシステムだ。
いずれ窓の杜かVectorに登録される・・・かもしれない。
また、このPCはラジカセ替わりも兼ねており、有線放送の様に次々とMP3データがシャッフル再生される。
選曲はY城とT邊の趣味が色濃く出ているため、かなりの比率で愛内里菜が流れる。
その他、照明、電源、ドライヤー、ホットカーペット等が設置される。

ピット側は、まずスコップと砂で地面を均してからコンパネを敷く。
その上にイージーアップテントを設置し雨にも備える。

当然ピットにも照明が設置される。
工具類は専用の台を置き、そこに整然とならべ、予備パーツ類も区分して箱に収める。
ここら辺はメカニック主担当のY城指示の元に進められる。
裏ではT原が電気関係の設備を整える。 今回は発電機2機体制と万全を期した。
食事を温めるためレンジを使うので、日中と夜間で発電機を切り替える作戦。
この電気関係のインフラは全てT原の装備でまかなう。
ドラえもんのポケットと言えばT原のジムニーも同様。
恐ろしいほどの荷物が満載されており、何でも出てくるのはハイエースと一緒だ。

食事関係のテーブル類や水タンク、その他設備も着々と設置されていく。
時を同じくしてマシンの最終仕上げが行われる。
しかし、この段階でゼッケンプレート等忘れ物が多いのが発覚。
また、昨晩は気付かなかった問題点も見つかり、車検までに何とか間に合わせるためにフォロー作業を急ピッチで行う。 ここら辺はライダーとN田の担当。
K森は忘れ物を取りに戻ったが、その間にも更に忘れ物が見つかり・・・家が近くて本当に良かった。
その頃、ある男が到着する。宮Tである。彼は栃木からわざわざサポートしにやってきてくれた。
スタートに間に合うように佐野の厄除け大師ステッカーをわざわざ届けてくれたのである。
さっそくステッカーはリアフェンダーに貼られることに。御利益ははたしてあるのだろうか!
後々このリアフェンダーがどういう運命となるかはお楽しみということで。

ここで少しマシンと関連部品の説明をしよう。

ベース車両はYAMAHAのTT-R Raid。
TT-Rをベースにラリーマシン風に仕上げられたマシンだ。
大きな丸ライトが付き大容量タンクが付いた他は、スイングアームがアルミ→スチールになっていたりチェーンも520→428になっていたりと少々デチューン(と言うかコストダウン)されている。
が、大きなジャンプ等があるわけでもなく、ライトやタンクは正に淡々と走るラリーレイド向き。
そして、大幅な改造はトラブルの元。 ベース車に極力改造をせず、耐久性重視でマシンを作った。
いつもの3時間耐久に対して大幅に異なる点は、レースタイトルにもある通り24時間、つまり夜間も走ること。
如何に前方の路面状況がよく見えるか、これが夜間のペースを左右する。
このため、ライトバルブは高効率ゴールドバルブに換装。 「明るい」とライダーの好評を得ていた。
テールライトも改造されている。
昨年はレース中に吹き飛んでしまったので、今年はK山が100円ショップで購入したLEDライトを3つ繋げて防水した物を製作した。
振動を感知してで点滅するタイプなので走行中は常に光ってくれる。

コースが全体的にガレ場であるため、エンジンを守るためのアンダーガード等は必須。
転倒に備えてハンドガードも装着する。
また、スペアマシンがある場合は丸ごと一台パーツ取りとして準備する。

今回はK山のTT−Rがスペアマシンとして持ち込まれ、これにあわせてRaidもチェーンを520に換装する。
そして圧巻はGASを含めた大量の予備パーツ群だ。
タイヤ、スプロケ、チェーン、レバーetc.・・・ガソリンも100L近く用意しなければならない。
壊れたからと言って、ちょいと買い物に出れるような場所ではないからだ。
|
10/25 09:30
そうこうしているうちにエントリー受付、車検の時間となる。
普通は車検場に持って行くのだが、このレースは主催者が各ピットを回ってくれる。
ありがたい話だ。

その後、ライダースミーティング。
基本的なルール、ライティングの決まり、周回計測方法の注意事項...etc.と手短に話が終わる。

この中でちょっと変わっているのが、周回計測方法。
通常は計測機器を付けたり、あるポイントを通る際に主催者が記録するのだが、このレースは自己申告制。
周回する度にバケツに入ったゴルフボールを自チームの番号の付いたバケツに入れることで周回数を申告する。
具体的には進行方向手前に設置された大きなバケツにゴルフボールが山の様に入っており、その先にゼッケン番号の付いたバケツがずら〜っと並んでいる。
ライダーは手前の大きなバケツの前でいったん止まり、そこからボールを一個取りだし自チームのバケツまで輸送。
そこでもう一回止まり、ボールを入れる。

手前のバケツから自チームのバケツが近いチームはワンストップで行けるが、そうでないと2ストップが必要となる。
ただ、ここでは前のバイクを抜いてはいけないので、レース展開への影響はさほど無い。
むしろここで無理な追い抜きなどで転倒し、皆のバケツをひっくり返した日には、「24時間レース」が「24時間耐久練習会」となってしまい、人里離れた山奥、他チームにフクロにされて生きて帰れる保証はない。(笑)
バケツにボールが10個貯まるとスタッフによって小さな洗濯ばさみが1つ、バケツのフチに付けられる。
この小さい洗濯ばさみが10個貯まると大きな洗濯ばさみ1つと交換される。
つまり100周を意味する。

と、こんな感じでスポーツマンシップに乗っ取った自己申告計測でレースは進むのである。
ライダーがミーティングに行っている間にもそれ以外のメンバーは残りの設営作業を行う。
昨年と異なり、11時スタートとなっていたためあらゆる面に於いて時間が無いのだ。
仕事の都合で早朝集合できなかったK山もこの頃到着した。
Y城は自ら作ったラップ計測システムの使い方をサポートの面々にレクチャーしている。
そんな中、N田とS田は一人の男性に声をかける。 もちろんそっちの趣味があるわけではない。
声をかけた相手はスカルライダースの監督、青GAS氏。
N田がよく出入りしているショップの常連を纏め、チームの代表として参戦されている。
事前に青GAS氏のHPでご挨拶をしていたので、この場でもちゃんとご挨拶をしておく、・・・っていうか、どんな方かお会いしたかったらしい。
聞けば坂内24耐の初回優勝者?やSSER参戦歴を持つ強者揃いとのこと。
我々とは比べ物にならない。
戦々恐々、スカルライダースのピットまで行く2人。
しかしスカルライダースのメンバーの受け止め方は違っていた。
HPでご挨拶したつもりが宣戦布告したことになっていた・・・。(^^;)
そしてこの時点では、24時間後にこのチームとバトルを繰り広げるとは思ってもいなかった。
ピットに戻るとマシンの製作はまだ終わっていない。
ヘッドライトは日中は取り外しゼッケンプレートに換装するのだが、プレートは持ってきたもの取り付けるためのパーツが足りない。
シートをさわったら固定ボルトも付いていない。
アウトプットシャフトもカバーを取り外していたため、危険防止対策も必要・・・等々。
しかも、TT系に詳しいはずのオーナー、K山、K森の二人が再びパーツを取りに行って帰ってこないため、作業も滞る。
11時が近づく。
第1ライダーのHS川はライディングウェアの装着を始める。

しかし、どう見てもスタートする気配が無い。 微塵も無いのだ。
早まる分には困るが、遅くなる分には特に困ることは無い。
とは言え、マシンも11時過ぎには完成。
あとはスタートを待つのみ・・・
ここでライダー装備の説明をしよう。
装備に関しては普通のレースと大差はない。
ヘルメット、ウェア、ブーツ、ガード類程度だ。
特記するとすれば、これは贅沢品かも知れないが「GOREソックス」なる物がある。
川渡り、特に夜は足が冷えると辛い物があるのでソックスの上から履くのだ。
GOREなのでブーツの中はビショビショでも足までは濡れない、・・・はずなのだが、勢いよく川に突っ込むと上から水が入ることもある。
夜間はもう少しオプションが付く。
緊急光源確保にヘルメットに小型LEDライトを装着。
そして今年からのニューアイテム、自チームのライダーを見分けるための識別灯。
この詳細は夜間セクションで記載する。

それともう1つ、ライダーベルトなるものが我がチームにはある。
残念ながらこれで変身はできない。
このライダーベルト、正確には小型ウェストバックで中には無線機を入れてあり、ライダーチェンジの際、次のライダーに渡される。
万が一走行不能に陥ったり怪我をした場合に救援を求めるためのお助けアイテムなのだ。
早朝に行われた無線圏内外確認作業はこのエリア確定のためでもあった。
|
10/25 11:20
どうやらスタート時間が延期になったらしい。
当初の予定通り12時スタート位だろうか。
ちょっと余裕が出来たので、予備ホイールへのタイヤの装着、ピットの整理、ゴミ袋の設置等をする。
ライダーは基本的なローテーションやピットインの合図、ライダーとピットとの意思疎通方法の確認、その他諸々・・・を行う。
12時が近づくにつれ、この人里離れた山中の空気が少しずつ変わり始める。
ライダーに招集がかかる。
各チーム、マシンを河原中央のスタートラインに移動させる。

HSTRも燃料コック、チョークレバーの確認をした後、Aチーム第1ライダーのHS川他、撮影班のF田、Y本、手の空いている数名が移動を始める。
殆どのマシンがスタートエリアに集結する頃、ふとピットの作業テーブルを見ると
そこには見慣れた物体、ライダーベルトが・・・。
ちょうどそこにいた第2ライダーのS田が河原中央まで走らされる。
何とか間に合いベルトも装着。
そして時を開けずしてエンジンスタートの合図。
|